自分を保つ術=「堅くなりすぎるか」or「自堕落になりすぎるか」


映画なんて「ハウルの動く城」以来だよ。


映画見る時間まで余裕があったので、本屋巡り。
うーん、収穫なし 泣 欲しい本があっても一巻足りなかったりすると買う気が失せる。


山本直樹の「ありがとう」上巻を立ち読みし、内容のへビィさにやるせない気分のままで映画館へ。



嫌われ松子の一生


そんな山本漫画を引きずってたわけじゃなく。
これ、映画館の作品紹介で「コメディ」と紹介されていたけど
最初から最後まで救い様なくて、ミュージカルとコメディ仕立てにしなかったらあまりにもダークすぎて観れないよ 汗


内容はタイトルどおり、主人公松子の一生を甥の笙を通して語っていく物語なんだけど
松子が教師を首になる件は、松子の頭が弱すぎて無理矢理っぽいなー汗
男によって生きる原動力が生まれ、簡単に上がったり下がったりできる松子は幸せだと思うし、羨ましい


ただ、松子みたいな愚直なまでの迷いの無さというか、無恥なくらいの純真さはすごく逞しいんだけど
あまりに一線しか見えなさすぎて、周りの日常変化する人々の気持ちや態度に気付けないのは事実。
だから自分の中の弱さや醜さに気付いて、人生やら生活やらに迷いを生じてしまったときに
松子のようなある意味神経図太い存在が近くにいるのは正直キツイ。


松子に暴力を振るってしまうのは、そういう気持ちを誤魔化す一方で、自分よりも強い者へのすがりもあるんだろうな。
強い人間が、弱い人間に愛を乞う、その思いは強すぎて誰も太刀打ちする事ができない。
だって松子は受け入れちゃうんだもん。それでいて夢も希望も捨てない。
男はもうダメの奈落に落ちてくしかないよ。


人間は弱い部分を持っているから、一人では生きてけないし、誰かいてくれないと寂しくてしょうがない。
だから人を愛するんだけど、その伝え方や伝わり方、自分を本当に大切にしてくれてる人の見極め方を
誤ってしまったらすべてが台無しになってしまう。
確かに松子は「愛し下手」だし「愛され下手」で不器用代表な存在だけど
この不器用さはこの映画に出てくる登場人物全員が当てはまる。


松子の父を筆頭に弟、甥、作家、元生徒のヤクザ等などの愛し愛される弱い男達


そのすべてを受け入れる松子。それに徹底して溺れる男達。
数々のダメ男と松子の共存がとても自然に成立している点では、
決して松子は不幸だとは思えない。


むしろ共感できるのは松子じゃなくて男のほうだったりする。汗


つまりは劇中の松子のセリフ


「ここに(一人で)いても地獄、あそこに(二人で)いても地獄」


がこの映画のすべてだよな。


松子は迷い無く後者を選んだって事。



キャスティングは、松子役の中谷美紀はもう眩暈するくらい何もかもが美しい。
つーか、松子は中谷美紀じゃなきゃ成り立たないわ。
これだけ内容がダークだと、貞潔で人形のような整った顔立ちで
ある種人間ばなれした人じゃなきゃあまりにリアルで観るの辛いもの。
どんなに汚れても汚れても完全に汚れない松子の象徴を見事に演じきってて、爽快だった。
また、色気も完全に消してるとこがまたよかった。
あのくどくどしい松子に色気あったら、鼻について感情移入できないし、紙一重で醜い女になってしまうもの。


そんでもってその分、色気大放出の、松子の親友役の黒沢あすかがすげーいい!
締まりのある演じ方が突き抜けててかなり存在感あったなぁ〜今後もチェック。


あと甥役の瑛太、今っぽい若者らしくて、TVドラマで見る清潔感は無く、無気力な感じでよかったし
松子の子供の頃の女の子がすごくかわいらしくて、そのかわいらしさが終盤の松子を引き立ててました。


それとびっくりなのがクドカン
私、クドカンの作品は好きだけど、クドカン自体はただの貧相な兄ちゃんにしか見えなくて興味なかったんだけど
今回の松子の恋人役で初めてクドカンに色気感じて、伊勢谷よりもいい男に見えた。
これまた親指部分が破れてた靴下に更に色気をそそられるんですよ。(わしだけ?)
出番少ししかなかったけど、いろんな男の中で一番よかったです。


あ。いろんな芸人が出演してるのは、狙っている感が否めなかったけど
それなりに合う役演じてたのでスルーしときます。
(でも劇団ひとりは、そこだけ自分のネタをやっているかのように感じたけど)


最初、これは泣けないなとか思っていたけど、終盤の松子と子供の頃の笙あたりから
物語全般が繋がって、涙がどどーっとでてきて止まらなくて(特にお父さんが出てくるだけで涙でる)
一人で観にきてよかったーとか思った 汗


あ、でも全部が全部笑えない映画だったわけじゃないよ。
光GENJIの内海をチョイスするあたりのセンスは完全に私のツボでした。笑


う〜ん、やっぱたまに映画見るのいいね。
次はゲド戦記あたりかな(でも予告でやってたデスノートみたくなってもた/汗)