乱歩にずっぽりと。


丸尾末広の漫画に乱歩のパロディが多いと聞いて無償に江戸川乱歩が読みたいと思ったら
偶然友達が短編集を買ったというので貸して貰うことに。


いろんな短編の中で、唯一推理小説でない異彩を放つ「芋虫」
世間から隔離された一つの空間で、体のほとんどを失ってしまった夫とその妻が
ただ何事も無く同じ生活を繰り返す残酷で異常な毎日
諦めしか生きる道の無い者同士が溺れた依存に
夫のすべてを閉ざしてしまいたかった妻も、井戸に身を投げた夫も
「終りがあれば、始まりがある」ということに希望をかけ、何かをきっかけに前進したかったのかもしれない。


「パノラマ島綺譚」は淡々と築かれていく人工美の不気味さをまざまざと見せ付けられ
そしていとも簡単に崩壊するその儚さになぜか女の醜さを重ねてしまった。


「目羅博士」の推理とは説明つかないルナティックな死への導きとか
「鏡地獄」や「人間椅子」のように精神心理を付いてくる恐怖感とか
「陰獣」の甘美なる危うさ、「押絵を旅する男」の摩訶不思議な展開
「屋根裏の散歩者」の陰湿な悪趣味等など

想像以上にただの推理小説ではなかったな。
犯罪者の動機も決して読者の情をひくものではなく、淡白であったり異常なまでの執着の果てであったりして
犯罪に行き着く人間の心理の理解しがたい部分を強調しつつ、とても淫靡でねっとりとした文章が狂気を際立たせて


まるで見てはいけないものをこっそりと覗き見にしている感覚に陥らしてくれる


だからたとえ読んでる最中に犯人がわかったとしても、そこで話が面白くなくなるどころか
反対にわかったからこそ、その真意への興味が増し続きが気になってページがドンドン進んでいく。


でも、話の中でよく「この部分は推理と関係ないので省略する」とかでてくるのがやけに笑えて
思わず「あ。省略するんかい」とつっこんでしまった。汗


まだまだ読んでないのあるから、ビレバンいったら買い揃えようかなぁ〜。


あ、丸尾のパロディ読んでてわかりました。重ねてみてニヤリと。