阻害と自虐は表裏一体。


業田良家 「自虐の詩」上、下巻


漫画読みの中で、「泣ける4コマ」として絶賛されてたのはだいぶ前から知ってて
ずっと読みたいなぁーとか思っていたら、先日古本屋で上下巻発見。ようやく購入。


内容は、子供の頃から不幸な環境である幸江と、ぶっきらぼうで短気なイサオとの愛ある4コマ生活。


で、素直な感想。
結構なんにでも感情移入してすぐ泣くこの私が、この本では泣く事はありませんでした。汗
でも、面白くなかったわけじゃなくて。かなり読み応えのある内容で全く飽きることなくページが進んだ。
これほどスピード感あって展開のしっかりした、話に重みがある4コマは初めて読んだな


執拗なまでの幸江とイサオの天丼、鉄板、お約束ギャグを上巻でこれでもかと見せておいて
下巻で急速な展開で読者を裏切り、そのオチに読者は思わずツッコまずにはいられない感動が待っているって感じで
正に、人情夫婦漫才を全編通して見せ付けられてるようだ。


わし、下巻も好きだけど。お約束ネタ好きなんで、上巻のどうしょうもなさが結構好き。
なんか、幸江だけじゃなくて、隣のおばさんも、あさひ屋のマスターも自分で自分の現状誤魔化して生きてるし
イサオは徹底して己の道を貫いて、その徹底さが天然を引き出してるし。
それに、すごく皆あったかいよね。幸江が全然不幸に見えない。
イサオはそんなにひどい男にみえないんだよね。裏表がないから、ホントに幸江の存在を頼りにしてるし
大切にも思っているのがわかる。「あなたのすべて」に嘘はない。


それよりも幸江のとおちゃんの方が嫌だ。こういう人には絶対関わりたくない。
犯罪を犯したのが幸江の為ではないとこがもう救いよう無い。
なにより、生活力の無い父親は、充分近くで見てるからもううんざりだ。


だからこそ、借金取りのおじさんや警察官のおじさんの暖かさが生きる。


でも、「私を愛してください」の言葉はすごく重い。


幸江に負けないくらい不幸な境遇の、高校時代の友達だった熊本さんのあの強さは
たぶん、幸江よりも諦めが早かったのだろうなと思う反面、それだけ幸江よりも大人で
人の価値は貧乏や裕福で量ることは出来ないし、幸や不幸も自分次第で
その「価値」というものがなんなのかがすでにわかっていて悟りきってたに違いない。


幸江はそれをわかるのが少し遅かったという事。


人って、阻害されて一人になったとき、相手以上に自分を深く恨む。
だって、いつも1人だから恨む対象も自然に自分だけになっていくのだから。
自分を責めれば責めるほど、卑屈になっていくから、益々人も愛せないし自分も愛せない。
それでも周りに人が居る限り、1人で生きてくことはできないんだよ。
だから自分を責めながら、自虐することで自分を笑って、人にも笑われて生きてくしかない。
それでも誰か、笑われる事でもいいから誰か自分に関心もってくれたなら
それはその人にとって、すごくうれしいことじゃないのかな。


そんな寂しさを経験した事無い人は、この漫画はつまらないかもね。


まぁ、最低でもいいから。図太く生き抜くことができれば、それで万万歳じゃないすか?人生は。


いや、自分に言い聞かせてるわけじゃないよ。ホント 汗