滅却。


「告白」


それにしても、毎度ながら映像の美しさとカメラアングルはお見事といいたい。
魅せ方一つで重い内容もテンポ良く観る事ができて、今んとこ私の中で中島作品にハズレなしv
内容は、生徒に自分の子供を殺された女教師の復讐劇。ちなみに原作は未読。


全編、誰も救われない生殺しの状態を、観る側に一切の同情の余地を与えず延々と観せつけ
犯罪における自己弁護を正当なものにする一歩手前で粉々に破壊して自らの哀れみさえも打ち砕き
静かに淡々と虚ろぎながらも徹底して追い詰めていく展開に息をするのも忘れてしまうくらいだった。


まるで、体に錘を乗せてゆるい坂を一定のローテンションで下って行く最中にいきなり錘を外され
その反動で加速がつき、坂を一気に下ってしまったかのような疾走感
観た後、軽い疲労にバランス感覚がおかしくなってしまった。


これは、R-15という割に目線は子供たちに向けられているかのよう
今時の子供。学級崩壊とか、携帯によるコミュニケーション不足、情報過多による精神の影響
愛情不足による感受性欠如と破壊衝動
犯罪への軽さと罪の無さ、偏見や間違った正義感と集団に引きずられたいじめと暴力。
TVやマスコミが囃したてる所謂「今時の子供」
脆さと愚かさを前面にだして子供の感情をいとも簡単に「心の闇」という一言で片付ける世間
「これは世間が映し出してるあなた達です」
「あなた達、こんな風に見られてますよ?」
はたして、箱の中に入れられた子供達の逃げ場の無い追い詰められた表情や演技は
同じ年代の子供たちが見て、きちんと等身大の狂乱だったのだろうか?
なんてことを観た後に感じた。


そんな風に観てたから、子供にまったく感情移入できなかったんだよね。
人を殺したといっても子供だから、少しの情とかあるのかなと思ったんだけど
すごく冷めた感情で、どっちかというと女教師の松たか子目線で
特にファミレスの松たか子のシーンはまったくもって同感だわと思って観ていた。


ちなみに子役は主犯の修哉より直樹の方が錯乱具合がコミカルで表情豊かだった。


主人公の松たか子は、意外と出番が少ない。
少ないけど登場したらグッと場面が引き締まる。
感情の見えない事務的なセリフをスラスラと語り出し、もうどうしょうもないくらい絶望にまみれていた。


いやだって、この映画の登場人物全員救われないけど
松たか子が一番救われない。すべてを失った時点でもう救われないのに
現実と向き合うことができるのはこんな形でしかなく、復讐すればすれほど益々救いはなくなって
きっと、悲しみも怒りもカラカラに渇いてしまってただ虚しく見えるだけ。


でも命はいつだって「軽い」し奪うのは「簡単」だ。


ラストシーンの松たか子の一言のようにね。


なんかもっと感想があったはずなんだけど、上手くまとまらなかった。
でもほんとに良作だと思ったので、暇な時もいっかい観てくるかなぁ。


うん、いい映画観れて満足。