可愛さ余って憎き漫才。


ディープピープル


浅草キッド水道橋博士ますだおかだ増田、中川家剛で漫才についてトーク
これ、中川家兄ちゃんが漫才を語るってのが新鮮で興味津々で録画したら
思った以上に濃い内容でかなり見応えあった。


もちろん、水道橋博士と増田の漫才に対するこだわりや所懐もおもしろく
水道橋博士の「漫才で毒づくことによって、客の毒を抜く」になるほどって思ったり
ますだおかだの漫才は増田の方が実はネタを忘れやすい」と意外な事実を知ったり
ネタの作り方やネタの流れの惰性、普段の漫才とM-1漫才の違い、センターマイクへのこだわりなど
三人三様それぞれの見解やスタイルがはっきり違っていて
それでも決してトークバトルに発展するわけでもなく、相手への尊敬の念もきちんとそこにあったのが印象的。


そんでやっぱ私のお目当ては中川家兄ちゃんなのだが
正直、兄ちゃんがここまで漫才に対して自分の思念を語るとは思わなかった。
しかも兄ちゃんの話した内容が数珠繋ぎに一貫して筋が通っている。


「ネタの作り方」について兄ちゃんは、台本を作らず要点をまとめ舞台でならし
おっさん同士の会話のようなあるあるを取り入れ客に親しみを持って貰いたいという
そして兄ちゃんは「ネタのセリフが何回もやってくうちに惰性になってくる」ことを嫌う
惰性になって感情のない早口は人間の会話としておかしいから
相方礼二が早口になってくると敢えてゆっくりしゃべって軌道修正をするらしい


これを聞いた後に「センターマイクはいるかいらないか?」で
「そこにおれ!」といわれてるようでむしろ邪魔だという兄ちゃんの言葉が俄然納得できてしまう。
「惰性の早口が人間の会話としておかしい」と思うお兄ちゃんは
単純に「マイクを前にしての会話も人間として不自然」なやりとりだと思ってるんだろうな


その辺にいるおっさん同士の会話のような漫才を目指していて
だからこそネタを作りすぎず、やり取りに感情をもって、立ち位置に拘らないという
この、一本筋の通った漫才へのこだわりを、兄ちゃんの言葉で聞けるなんてすごくうれしい。


そして兄ちゃんが終盤で言った
「今は漫才が嫌い」でも「舞台に出てる時の方が逃げてるみたいだ」という言葉になぜか感極まってしまった。
パニック障害になった時、舞台に上がるのも辛い状態になっていた兄ちゃんが
今はその「辛くなる場所」が「逃げられる場所」になるだなんて
なんか、物静かにさらっと言ってしまえる兄ちゃんがあまりにかっこよくて本当に感動してしまった。


あ、でも観てる側として、センターマイクはあったほうがかっこいいと私は思うけど・・・


なんにしても30分という短い時間に溢れてしまうほどに詰め込んだ漫才愛にどっぷり浸れた番組であった。