差し伸べる手の行方


「ヒア・アフター」

内容は、霊能力者のジョージと、津波で一命を取り留めたマリー、双子の兄を事故で亡くした少年マーカスの
死に接した3人が出会い、癒されるまでの物語。


たぶん、冒頭の津波シーンがあったからこの映画が上映中止になったんだろう。
確かに私も前のブログでこのことは書いた。
実際、この津波のシーンは迫力があったし、その2日後に起こった大震災と重なるものがあった。
でも、その津波シーンはホントに最初の数十分だけで
実際は「死」を拭う事ができずに日常を過ごさなければいけない3人が
どのようにその死と向き合い、生きていくかという部分こそがこの物語の軸であって
津波災害の惨劇を中心とした物語でもないし、その被害を茶化してるわけでもない。


別に上映中止を批判してるわけでもないし、今こういう混乱をみると上映を控えるのも一つの手だと思う。
でも、この映画のきちんとした物語説明もなしに「津波シーンがある為上映中止」だけの文字を書いたら
映画観てない人には「ヒア・アフターは津波災害の映画」という印象を持ってしまうんじゃないのかな?


この映画で3人は「死」に纏わりつかれながらも日常を懸命に過ごしている。
能力を持つ者にしか理解できないジョージの疎外感や
双子の兄の死を理解できずにもがくマーカスの誰にも頼れない心細さ
一命を取り留め、死に接したからこそその経験を生かそうとするマリーの奮闘
それぞれの分かち合えない孤独や苦悩を、観る側が退屈に感じるほど淡々とした日常の中で描き
その葛藤に誰もが共感できるリアルさを感じることができる。


そんな3人が一つの場所で出会い、孤独を分かち合って癒される。


ずっと頼っていた兄の突然の死に置いてけぼりを感じたマーカスは
自分の命が兄の形見の帽子によって救われたのがわかったことで
死んでも兄は傍にいてくれるという心強さを感じる事ができたんだろう。
マリーは、それでも3人の中で一番逞しかったな。
孤独や苦悩はあったけども、以外と自分で生と死への葛藤を切り開いていた気がした。女は強いね。
でも、だからこそ死後の世界を人の手に触れて見ることができるジョージのその手はマリーを求めたんだろう。
ホントは誰よりも自分自身が助けを求めて差し伸べていたその手の行方をきちんと見つけ出したからこそ
あの二人の未来の映像がジョージに見えたんだろうな。


緩やかながらもいい映画だったから、有耶無耶にしないできちんと感想載せるべきであった。反省。


被災地の方々も、それを取り巻く周囲の人たちも、この映画のように癒される時がくるといいなと思ってます。