やっと感想。


夢野久作 「少女地獄」


短編集。もっとおどろおどろしいのかと思ったら、意外に読みやすかったわ。


内容は
虚構癖があり、それによって自分を死へと追い詰めてしまう少女「何んでも無い」
親友を殺した殺人犯とわかっていながら、その殺人犯を愛してしまう女「殺人リレー」
外見の醜さから、自分を傷つけた者へ死への復讐をする少女「火星の女」


三作品とも同じ事が言えるのは、女は現実をしれば知るほど自分の世界に生きていこうと夢を見る生き物だということ
いかに自分に酔えるかなんだろうな。自分の世界に酔ったモン勝ち。


姫草ユリ子の嘘って子供の見栄みたいなもんだよね。
なんか、自分を大きく見せたくて嘘をついて引き下がれなくなっちゃいましたという感じ。
騙された医者の臼杵も心底ユリ子を憎めなかったのは虚構の中に幼さを感じたからなんだと思う。
彼女にしてみれば、その嘘も大真面目で命がけで純粋。
どうせ哀れに思われるのならば、哀れを演じて同情を買ったほうがマシ。
それが彼女のすべてなんだろうな。


友成トミ子は親友の手紙で散々新高という男の危険性を知っていたにも関わらず
自分の命よりも新高との淡い夢を取ってしまった。
一人寂しく生きていくのなら、人を愛してる状態で死んだ方が幸せ。
そう思ったから結果、新高の方が死んでしまった後の孤独と同時に
出来てしまった赤ちゃんへの罪悪感に耐えられなくて死を選んだんだと思う。
親友への復讐なんかよりも自分の寂しさの方がいっぱいいっぱいだったんだろうな。


そして火星の女、甘川歌枝の話が一番面白い。
自分の外見への悩みが、更に周囲に馬鹿にされる形で大きくなり
あげく信じていた校長にも影で「火星の女(人間でない)」とあだ名で呼ばれ
しまいにはその校長に手篭めにされたらそりゃ復讐もしたくなるよな。
でもきちんとここにも余計な愛がある。
手篭めにされたとはいえ、初めて女として扱ってくれた校長への媚びが
この女への同情を消し、やはり愚かな女へと仕向けている。
そして立派に復讐を遂げた後に残ったかすかなプライド「・・・・ペッペッ・・・・」
すげぇ、もうこれこそ女の執念というのがこの一言ですごく巧くまとめあげている。


しかし、最後の最後まで女である為にすごい体力と気迫。
私には真似できないな。汗


他の3篇もおもしろかった。
特に「童貞」は文全体の雰囲気がまるで霧がかかっているかのような夢物語な印象。
夢久の文体はとても丁寧で読みやすい。


さて、ユリ子はホントに自殺したんかいな?